こんにちは、派遣営業のハンケです。
12月に入り、今の職場で長く働いているスタッフさんから、こんな相談を受けることが増えました。
「営業さん、今の職場でそろそろ3年(抵触日)になるんですけど、『無期雇用派遣』に切り替えませんか?って案内が来たんです」 「やっぱり、時給制より月給制のほうが安定しますよね?」 「ボーナスも出るって書いてあるし、正社員みたいになれるならお願いしようかな…」
ちょっと待ってください。 そのハンコ、押す前に一度深呼吸をして、この記事を最後まで読んでください。
確かに「無期雇用派遣」は、雇用が安定するという意味では素晴らしい制度です。 しかし、私たち営業担当の本音を言えば、**「安易に切り替えると、後悔する人が最も多い契約形態」**でもあります。
特に、家庭やお子さんがいて「働く時間や場所」に制約がある方にとって、無期雇用派遣は「安定」どころか**「自由を奪う足枷」**になりかねません。
今回は、パンフレットのメリット欄には決して書かれていない、無期雇用派遣の「3つの罠」について、現場の裏事情を包み隠さず解説します。
まずおさらい。「無期雇用派遣」とは何か?
誤解を恐れずに一言で言うと、**「派遣会社の『都合の良い』正社員になること」**です。
これまでの「登録型派遣」は、仕事がある時だけ契約を結ぶスタイルでした。 対して「無期雇用派遣」は、派遣会社と無期限の雇用契約を結びます。 これにより、もし派遣先との契約が終わっても、派遣会社との雇用は続くため、お給料(または休業手当)が途切れないというメリットがあります。
「えっ、すごく良い制度じゃない?」 そう思いますよね。ですが、メリットの裏には必ず強烈なデメリット(義務)が存在します。
罠1:「選ぶ権利」を失い、「断れば退職」の恐怖
登録型派遣の最大のメリットは、「仕事を選ぶ権利」があなたにあることです。 「家から遠いから嫌です」「その業務はやりたくありません」と断っても、次の仕事を探せばいいだけでした。
しかし、無期雇用派遣になった瞬間、立場が逆転します。 あなたは派遣会社の社員になるわけですから、会社の「業務命令」には従わなければなりません。
営業担当が次の仕事を持ってきて、 「次はここに行ってください。通勤は片道1時間半かかりますが、規定の範囲内です」 「次はコールセンター業務です。事務ではありませんが、空きがないので行ってください」 と言われた場合、原則として断れません。
もし「嫌です」と断り続けるとどうなるか? 「業務命令違反」とみなされ、最悪の場合、自己都合退職に追い込まれるリスクがあります。
特に、お子さんのお迎えや家庭の事情で「絶対に17時に上がりたい」「自宅から30分圏内がいい」という譲れない条件がある方。 無期雇用契約を結ぶと、その条件が「ワガママ」と捉えられてしまう可能性があるのです。
罠2:「賞与アリ」の甘い言葉と、下がる手取り
「ボーナスが出る!やった!」と喜んで契約したら、明細を見て愕然とする…。 これも非常によくあるケースです。
無期雇用派遣の求人票には、確かに「賞与あり」と書かれています。 しかし、一般的な正社員のように「基本給の2〜3ヶ月分」が出ると思っていませんか?
多くの派遣会社の無期雇用における賞与は、 「寸志レベル(数万円〜10万円程度)」 「評価連動型で、最初はほぼゼロ」 というケースがザラにあります。
さらに計算してみましょう。 無期雇用になると「月給制」になることが多いですが、実はこれを時給換算すると、登録型派遣の時給よりも低く設定されていることがよくあります。
- 登録型派遣: 時給1,700円(交通費別途)×フルタイム = 月収約27万円
- 無期雇用派遣: 月給21万円 + 賞与年2回(計20万) = 年収約272万円
「あれ? 年収で見ると、責任が軽い登録型派遣の時と変わらない(むしろ下がる)…?」 こんな逆転現象が起きることがあります。 「安定」の代償として、毎月の手取り額がガクンと減る覚悟はできていますか?
罠3:3年後の「市場価値」が上がりにくい
登録型派遣の場合、あなたの時給は「市場価値」で決まります。 スキルを上げて「Excelエキスパート」になれば、時給1,800円、2,000円とステップアップして会社を変えていくことができます。
しかし、無期雇用派遣の場合、あなたの評価基準は「派遣会社の社内規定」になります。 どれだけ派遣先で高い成果を出しても、派遣会社内の給与テーブルが決まっていれば、昇給は微々たるものです(年数千円など)。
また、会社都合でいろいろな職場を転々とさせられる可能性もあるため、 「事務のスペシャリストになりたいのに、工場の事務やコールセンターなど、一貫性のないキャリアになってしまった」 という事態も起こり得ます。
結果として、30代、40代と年齢を重ねた時に、「何でも屋」にはなっているけれど、「専門スキル」がないという状態に陥るリスクがあるのです。
それでも「無期雇用」を選んでいい人、ダメな人
ここまで怖い話ばかりしましたが、無期雇用派遣が「正解」になる人もいます。
【無期雇用派遣に向いている人】
- 職種や勤務地にこだわりがなく、とにかく「雇用の空白期間」を作りたくない人。
- 未経験の職種にチャレンジしたい若手層(研修制度が充実している場合があるため)。
- ローン審査などを通すために、どうしても「月給制の社員」という肩書きが欲しい人。
【無期雇用派遣はやめたほうがいい人】
- 子育て中などで、勤務地や時間の条件が譲れない人(★最重要)
- 特定の専門スキル(経理、貿易、翻訳など)を極めて、時給を上げていきたい人。
- 「今の職場・人間関係が好きだから」という理由だけで残ろうとしている人(※無期になっても、派遣先の事情で契約終了になれば異動させられます)。
まとめ:営業担当への「魔法の質問」
もし今、無期雇用への転換を迷っているなら、ハンコを押す前に担当営業にこう聞いてみてください。
「もし次の紹介先が、私の希望(通勤30分以内・残業なし)に合わなかった場合、断る権利はありますか?」 「昨年の、無期雇用スタッフのボーナス支給実績(平均額)を教えてください」
この質問に対して、営業担当が言葉を濁したり、「基本的にはご希望に沿いますが…」と歯切れが悪かったりする場合は、要注意です。
「安定」という言葉は魅力的ですが、派遣社員の最大の武器は「自由」であることです。 その自由を手放してまで得る価値が本当にあるのか。 契約書にサインをする前に、もう一度だけ冷静に計算してみてくださいね。
著者:ハンケ(@hanke_sales) 現役の派遣営業マン。X(Twitter)では派遣営業の裏話や、派遣社員の皆さんが損をしないための情報を発信しています。 👉 https://x.com/hanke_sales


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