「産休代替」という働き方。
期間が決まっているからこそ、割り切って働ける良さがある一方で、「契約満了の時期が近づくと、次の仕事を探さなきゃいけないプレッシャーがある」という方も多いのではないでしょうか。
求人票には「◯年◯月までの期間限定」と明記されていますし、面接でもそのように説明されます。当然、そのつもりで入社しますよね。
しかし、長年現場を見ている私の**正直な体感をお伝えすると、「約半数は、当初の予定通りには終わらない」**という印象です。
もちろん会社や部署の方針にもよりますが、「絶対に期間満了でサヨナラ」というケースばかりではありません。むしろ、現場では「延長」や「別ポジションでの継続」、あるいは「直接雇用の打診」といった調整が入ることが非常によくあります。
なぜ、決まっていたはずの期間が変動するのでしょうか? 今回は、現場で実際に起きている「産休代替が延長・継続になるリアルな理由」と、私たちが持っておくべき心構えについて深掘りしてお話しします。
求人票通りにはいかない?「期間延長」が起きる3つの主な理由
企業側も嘘をついているわけではありません。採用時点では本気で「この期間で戻ってくる予定」なのです。しかし、育児や組織人事というのは、計画通りに進まないことの連続です。
私がこれまで見てきた中で、契約期間が延びたり、雇用形態が変わったりするきっかけには、大きく分けて3つのパターンがあります。
1. そもそも「復帰しない」ことになったケース
これが最も多い、かつ直前まで予測できないパターンです。
産休・育休に入っている社員さんは、当然復帰するつもりで休みに入ります。しかし、いざ復帰のタイミングが近づくと、状況が一変することがあります。
- 保育園が見つからない(待機児童問題) 地域によっては、0歳児・1歳児クラスの入園が激戦です。「復帰したくても預け先がない」という理由で、育休を半年、1年と延長せざるを得ないケースは後を絶ちません。そうなると、当然代替要員であるあなたの契約も「保育園が決まるまでお願いできませんか?」と延長の相談が来ることになります。
- ライフスタイルの変化・退職 育休中にパートナーの転勤が決まったり、実際に子育てをしてみて「今の激務な部署に戻るのは無理だ」と判断したりして、そのまま退職を選択される方もいます。 こうなると、企業側は急に「後任を探す」か「今いるあなたにそのまま残ってもらうか」の二択を迫られます。すでに業務に慣れているあなたが重宝されるのは言うまでもありません。
2. 復帰しても「キャッチアップ」に時間がかかるケース
次に多いのが、社員さんが予定通り復帰はしたものの、**「即戦力として完全に戻るまでには時間がかかる」**というパターンです。
「復帰したなら、私の役目は終わりですよね?」と思うかもしれませんが、現場はそう単純ではありません。
例えば、1年半休んでいる間に社内の基幹システムが入れ替わっていたり、業務フローが激変していたりすることはよくあります。復帰した社員さんは、浦島太郎状態です。 また、多くの場合、復帰直後は「時短勤務」を選択されます。フルタイムでバリバリ働いていた頃と同じボリュームの仕事はこなせません。
その結果、「社員さんが勘を取り戻し、新しいフローを覚え、時短勤務のリズムで業務を回せるようになるまで」という名目で、半年〜1年ほど並走期間(ダブルキャスト)が設けられることがあります。
この期間は、あなたにとってもメリットがあります。業務の引継ぎを焦って行う必要がなく、社員さんのサポート役として精神的に余裕を持って働けるからです。
3. 復帰後の社員さんが「別部署へ異動」になるケース
これは少しシビアな話になりますが、会社側の人事戦略としてよくある話です。
産休前は営業の最前線にいた社員さんでも、復帰後は「突発的なお休みが取りやすいバックオフィス」や「負担の少ない部署」へ異動になることがあります。これをマミートラックと呼ぶかどうかはさておき、企業としては人員配置の最適化を図るため、珍しいことではありません。
そうなると、元々いたポジション(あなたが今守っている席)が空席のままになります。
「元の持ち主が戻ってこない」のであれば、その業務を一番知っているあなたが、そのままそのポジションの正任としてスライドしたり、新たな契約を結んだりする流れになるのです。
企業側にとって、あなたは「手放したくない存在」になっている
ここまで読んでいると、「なんだか企業の都合に振り回されている気がする」と感じるかもしれません。
しかし、視点を変えてみてください。 なぜ企業はあなたに延長や継続を打診するのでしょうか?
それは、「またイチから新しい人を採用して育てるコスト」を企業が何よりも恐れているからです。
産休代替として入社したあなたは、すでに社内の雰囲気や人間関係を知っています。独自のシステムの使い方や、ややこしい社内ルールも把握しています。 そんな「即戦力」であるあなたを手放して、また求人広告を出し、面接をし、ゼロから教える……これは現場のマネージャーにとって悪夢のような手間です。
だからこそ、社員さんの復帰状況に少しでも変更があれば、「なんとかして今の代替の方に残ってもらえないか」と予算やポジションを必死に調整しようとするのです。
私の体感で「5割くらいは調整が入る」と感じるのは、単なる偶然ではなく、**「現場があなたを必要としているから」**起きる必然の結果とも言えます。
最初から「変動する前提」で考えておくと安心
これから産休代替の仕事に就く方、あるいは今まさに契約満了が見えてきている方に伝えたいのは、**「終了日はあくまで目安であり、流動的なものだ」**と捉えておくことです。
「○月○日で絶対に終わる!」と思い込んで次の予定をガチガチに決めてしまうと、延長の打診があったときに「嬉しいけど困った!」とパニックになってしまいます。逆に、「絶対に延長されるはず」と期待しすぎるのも、万が一あっさり終了した時のショックが大きいので禁物です。
おすすめの心構えとしては、以下のようなスタンスです。
- 契約満了の3ヶ月前くらいから「空気」を読む 社員さんの保育園の状況や、復帰の意思などは、なんとなく職場の雑談で聞こえてくるものです。「あれ? 復帰の話が具体的に出てこないな?」と思ったら、延長の可能性があるかもしれません。
- 「延長」と言われたらラッキー、くらいの気持ちで 延長になれば、転職活動の手間が省けますし、慣れた環境で長く働けます。もし終了になれば、予定通り次のステップへ進めばいいだけです。
- 自分から意思表示をしておくのもアリ もしあなたがその会社を気に入っていて「長く働きたい」と思っているなら、面談の際などに「もし状況が変わるようであれば、長く働きたい気持ちがあります」と伝えておくのも有効です。上司としても、あなたの意向を知っていた方が社内調整に動きやすくなります。
産休代替は「チャンス」の宝庫でもある
「期間限定だから」と敬遠されがちな産休代替ですが、実はキャリアにおける「美味しいポジション」であることも多いです。
なぜなら、産休に入る社員さんは、長年その会社でキャリアを積んできたベテランや、重要なポストに就いているケースが多いからです。 通常の中途採用や派遣求人では募集が出ないような、「大手企業の責任あるポジション」や「経験者しか就けない専門職」に、代替要員としてなら入り込めたりします。
そこで実績を作れば、今回のテーマのように:
- そのまま契約延長になる
- 別部署の正社員として声がかかる
- その経験を職務経歴書に書き、次の転職でキャリアアップする
といった道が開けます。
実際に私の知人でも、大手商社の産休代替として入社し、最初は1年契約の予定でしたが、社員さんの退職に伴いそのまま正社員登用された方がいます。彼女は「最初から正社員枠だったら、倍率が高すぎて絶対に入社できていなかった」と語っていました。
まとめ:白黒つけすぎず、柔軟なキャリアを楽しもう
「産休代替は必ず終了になる?」
この問いに対する答えは、**「No(必ずしもそうではない)」**です。 現場の感覚としては、半分くらいの確率で何らかの変更・延長・調整が発生します。
理由は、社員さんの「復帰断念」「長期のキャッチアップ」「異動」など、会社側の事情がほとんどです。
だからこそ、あまり「期間限定だから……」と縮こまらず、「どうせ予定は未定なんだから、今の仕事を精一杯やって、あとは流れに身を任せよう」くらいのスタンスでいるのが、精神衛生上もっとも楽ですし、結果的に良い方向へ転がることが多いです。
もし今、産休代替の案件で迷っているなら、期間の制約をネガティブに捉えすぎず、飛び込んでみることをお勧めします。そこには意外な「続き」が待っているかもしれませんよ。
あなたの働き方が、より柔軟で、納得のいくものになることを応援しています。


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